HAWKWIND- THE MACHINE STOPS 各曲レビュー

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今回のリリースはCD1枚とLP2枚組でリリースされています。LPの内容はCDと同じとのこと。まずはCDを入手しました。今出回っているのは、デジパック仕様です。

今回は英作家E.M.フォースターが1909年に発表した短編SF「機械が止まる」をベースにしたコンセプトアルバム。フォースターはSF作家ではなく、純文学の作家ですが、この小説は「Machine」に支配された人類を描いた作品であり、書かれた年代を踏まえても一般的なSF小説としても良くできた作品だと思います。

邦訳は1964年のSFマガジン、1996年のフォースター著作集5「天国行きの乗合馬車」(みすず書房)で紹介されているだけで絶版となっており、古本も高価です。自分は後者を図書館で借りて読みました。

直前作「Spacehawks」(2013年)は、再録曲、リミックス、新曲などのコンピレーション作品でしたので、ホークスのスタジオアルバムとしては、2012年の「オンワード」以来の作品となります。アルバムからのシングルカット「A Solitary Man」が7インチビニールで5月27日リリース予定。アルバム発売に先駆けてプロモーション動画も公開。デイヴがボーカルのアップテンポなメロディアスなナンバー。

アルバムカバーはここ数年(2010年の「BLOOD OF THE EARTH」から)ホークスやデイヴ・ブロックのアルバムカバー、プロモーションビデオの制作を手掛けている周辺バンドKRELのリーダー、マーティン・マクギネス。KRELは2000年前後に2枚のアルバムをリリースしていますが、それ以降はリリースがありません。当時、同じくホークスフォロワーだったSAPCEHEADのMrディブス(現ホークス)が参加したりと交流がありました。

そのマーティン・Mによるカバー、ブックレット共、フォースターの小説のイメージに沿ったデザインになっています。「機械が止まる」は作者のフォースターが、H.G.ウエルズのユートピア的作品に反発して書いたと言ってるように、Machineに支配され人間性を失った人類を描いたディストピアを描いた作品。

オープニング All Hail The Machine は、一人一人にコンパートメントをあてがわれた人類が、常に耳にしているというMachineの鳴動をイメージさせるSEからスタート。ブロックとディブスの作曲。突如重低音と電子音シークエンス、ディブスの語りはMachineを崇拝する人類の声。カルバートの語りのようです。複数の声で「マシーン万歳!」が連呼され、2曲目 The Machine が勢いよく始まります。ホークスのアルバムオープニング定石通りのカッコイイ系突っ走り曲。ボーカルはディブス、Aメロと並行してデイヴのギターソロが続く、中間部やや単調なギターリフ、そしてギターソロ、突っ走りが高揚感を盛り上げ、その後Aメロが戻りエンディング。Machineに全て管理され地下で生活している人類、その異常さに気づいた主人公クーノーの疑問が歌われます。ブロック、ディブス、チャドウィック作。これ、久しぶりに名曲かも。次の Katie は1分弱のシンセの流れるようなキレイな曲、ブロック作。つながる形で次曲 King Of The World、ドラムと共にハードなギターリフ、すかさずブロックのボーカル。ベースはホーンにチェンジ。2分50秒ほどで終了し、バラード調の In My Room に続く。シンセの重厚なコード進行に乗せてブロックのリードボーカル、突如曲が途切れて、さめざめとしたシンセのパッド音、雷雨のSE、主人公クーノーが垣間見た地上の印象が描かれているようです。ここまでオープニングからほぼ切れ目なしに続いています。少しの静寂の後、スローで重々しいコード進行に導かれた Thursday、前曲同様、ブロック、ホーン、チャドウィックの演奏。中間で演奏の流れが途切れ情景描写に、シンセコード、SEなど目まぐるしく変わる。今作では、このように曲の変化が多彩でコンセプトアルバム然とした作りが特徴、深みを感じます。

続いて威勢の良いメロディアスなチューン Synchronised Blue。「アライヴァル・イン・ユートピア」や「ライト・トゥ・ディサイド」系の楽曲、中間も定番のハードリフでストイックに攻めつつ、シンセが唸ります。デイヴのリード・ボーカル含めてどこもどこかで聞いたことのあるフレーズですが、これがホークスの真骨頂ですね。間奏からブリッジ挟んで、Aメロが戻るあたり、かっこ良すぎですね。最後はフェードアウト。

続く Hexagone は、デッド・フレッドの一人曲。スローテンポのラブリーな小曲。キーボード類とボーカルもフレッドがプレイ。クーノーの母が乗った飛行船の旅のイメージを歌ったもので、ブックレットの同曲の歌詞掲載ページも海の上を飛ぶ飛行船のイラスト。クレジットを見るとフレッド参加曲はこの曲のみとなっていますが、次の曲でバイオリンの音色が聞こえるので、それも彼が演奏してるのではないでしょうか。

浮遊感のある電子音に導かれてブロックの歌声から始まる Living On Earth は、流麗な楽曲で、ブロック、ディブス、チャドウィックの演奏。シンセ中心の演奏に電子音が流れ、文字通りスペースロックが展開されていきます。中間部のバイオリンの演奏もリズミカル、アルバムのハイライト。心地よい演奏がフェードアウトすると、銅羅の音とともにシンセシークエンス、サンプリングされたha-he-という声。ホーン一人曲 The Harmonic Hall、来日公演でHe Ha!と紹介された曲ですね。ステージではホーンがMacを操作していました。Hassan i Sahba を彷彿させる中近東なフレーズ。今回、曲の配置も自然で全体の流れがスムーズ。

1分程度の小ピース、Yum-Yum はコンパートメントの中、アームチェアに包まれて過ごす人類の味気ない食事のイメージでしょうか。続いてクーノーの孤独な心情を歌ったポップでブルージーな A Solitary Man。アルバムに先駆けてネットで公開された曲で、来月には7インチビニールでシングルカットされる予定。ブロック、ディブス、チャドウィックの演奏。フェードアウト後は電子音、不穏なフレーズ、一変、明るいテーマとなって軽快なピアノとブロックのコーラスが遠くに流れるリラックスムードの曲 Tube に。新メンバー、ハズ・ウィートンのベース、チャドウィックのドラム、その他はブロックが演奏。物語のクライマックス、Machineが停止しチューブには困惑した人々が逃げ道を探して殺到し、その後の人間性の回帰を確信するポジティブなイメージ。

最終曲も同じ3人での演奏。大団円に向けてアップなハードナンバー。歌詞パートの後にブロックによる語り。Machineによる管理の終焉、最後に皮肉を込めた「マシーン万歳」が唱えられ終了。最後のサンプリングピアノのよる演奏は、ブロックのソロ「BROCKWORLD」収録の The Last Tango。

アルバム全体の統一感があり、完成度の高さを感じます。いつもよりデイヴのコントロールが強い感じがしますが、それが成功したと思います。先月リリースされたブロックのソロと比較して、やはりホークス名義ということで、完成度は遥かに高いところが嬉しいです。

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このアルバムを引っさげて現在UKツアー中のホークス。アルバムの評価はこれから出てきますが、以下のレビューでは「絶対絶命」以来の出来なんて書かれてます。

Hawkwind – The Machine Stops – CD Review