WARRIOR ON THE EDGE OF TIME 絶対絶命 5.1ch サラウンド評

OUT OF THE SHADOWS
SECRET FILMS/SECDVD110 (PAL)
2013年にATOMHENGEレーベルより満を持して発売されたWARRIOR ON THE EDGE OF TIMEの公式初デジタル化ですが、CDに加えてDVDもリリースされました。ホークス作品の中で本確的サラウンド構築された初めての作品となりました。
サラウンド形式という点では、過去にいくつかリリースされています。DVDのOUT OF THE SHADOWS(’04)は’02年のライブを収めたものでDolby Digital5.1chでした。しかしマルチトラックをサラウンドの各チャンネルに割り振ったようなものではなく、リアに残響成分を入れた擬似サラウンドという感じでした。
SPACE RITUAL
COLLECTORS EDITION
EMI/HAWKSR 4 (DVD:PAL)

さらには名盤SPACE RITUALのCOLLECTORS EDITION3枚組(’07)のDVDはDTS5.1chとDolby Digital5.1chの再生モードがあり、クレジットにはオリジナルステレオからアップミックスしたと記載されています。リズム、ボーカル、ギターは前に寄せており、後方は高音がカットされた残響、それに電子音やノイズが鳴っているもの。前述のOUT OF THE SHADOWSよりはサラウンド感があります。しかしマルチトラックから起こした本格的なものではありませんでした。
なお上記2枚はPALですので、PALの再生環境がないと再生できませんのでご注意ください。

SPACE RITUAL COLLECTORS EDITION DVDのオーディオ・セットアップ画面

ATOMHENGEの絶対絶命のサラウンドは2CD+1DVDの3枚組であるEXPANDED EDITIONか、それにアナログ盤を加えたSUPER DELUXE BOXSET LIMITED EDITIONで聞くことができます。DVDプレーヤーと5.1chを再生できる環境が必要です。

THREE DISC EXPANDED EDITION
ATOMHENGE/ATOMCD31037

SUPER DELUXE BOXSET LIMITED EDITION
ATOMHENGE/ATOMBOX1001

長年CD化が待たれていた名盤のデジタル化ということで、ATOMHENGEはかなり力を入れ、オリジナルマスターからのリマスターを始め、マルチトラックテープからの新リミックスはスティーヴ・ウィルソンに依頼されました。
そしてサラウンドミックスもプログレのサラウンド化マイスターとでもいうべきウィルソンに依頼され、マルチトラックから5.1chへ構築した本格的なものとなりました。
MLP Lossless5.1chとDTS5.1ch、Dolby Digital5.1chの3種のモードが選べます。音質はこの順通りでMLP Losslessが最も高音質。

ATOMHENGE WARRIOR DVDのオーディオ・セットアップ画面

当時のユーロロック・プレスに掲載されたウィルソンのインタビューで詳しく語られていますが、まずウィルソン自身もホークスを聴いて育ってきたとのことで、サラウンド化を依頼されたことは名誉だと述べていました。プログレに造詣が深い彼ですが、さすがホークスも押さえていました。曰く、各トラックだけで聴くと酷いと率直な感想、でもそれが一つになるとめちゃくちゃカッコよくなるのがホークスとのこと。また元々クリアでない塊感が魅力なので、作業中クリアになりすぎて、元のグランジーな魅力がなくなっていないか気をつけていたとのこと。正直ウィルソンさんがそこまでホークスのことを理解して作業したとは思わなかったので、とても嬉しい話でした。そんな絶体絶命のサラウンド、どのようにミックスされているのか、以下レビューします。

Assault And Battery
イントロのベースはフロントの2chとウーファー、メロトロンはオリジナルより明らかに強調してリアの2chで盛大に鳴っています。メロトロンを後方から鳴らすことでアルバムのテーマであるヒロイックファンタジーの舞台感が出ています。
続くハイハットはフロント、リア同じくらいの音量でオリジナル同様右側に配置。
続くドラムはフロント左右。後方でも鳴っていますが、ほとんど前方です。フルートは中央後方寄りに出ているので頭の上で舞ってるように聞こえます。
デイヴのボーカルはフロントのセンター。ここで初めてセンターから音が出ます。センターはボーカルのみ。ですので、他のスピーカーをオフにするとボーカルだけ聴くことができます。ボーカルの残響成分は左右、後方の左右でも鳴っています。ギターは前方左に寄っています。中間部のフェイズのかかった唸るオルガンも後方から。カウベルはセンタースピーカーから。コンガもフロント寄り。

Golden Void
前曲とのつなぎ、壮大なメロトロンは引き続き後方の2chで高らかに鳴り響いてます。ハウスの耳を擘く高音のミニコルグのリードソロは前後左右のセンター真ん中。フィードバックのかかったエレキのサスティンがフロントのセンター。サックスは後方で左右にパンしています。ここはサラウンドの効果がすごく、包まれ感に至福の時を感じます。ギターのストロークは引き続き前方左。

The Wizard Blew His Horn
朗読と効果音による曲ですが、このような場面ではサラウンドによる音響効果は如実ですね。ボイスは前で、そのディレイは後方で左右にパン。パーカッション類は前方、キーボードのグッリサンドのようなノイズは後方。

Opa-Loka
アパッチビート風のパーカッション群は前方後方の4つのスピーカーから囲まれるように鳴っています。ベース、フルートは前方、ストリングスは後方、電子音とギターはサラウンドの音場の中を回転するように舞っています。

The Demented Man
ボーカルはセンター、アコギはセンター含めた前方3つのスピーカー、コーラス系のメロトロンは後方、潮騒と海鳥の声は全体で鳴っています。ボーカルのコーラスはフロントの左右に振り分けています。

Magnu
イントロの嵐の音は四方から、ギターは前方左、ドラムも前方左、2つ目のドラムセットは前方右と後方右でも結構鳴っています。ツインドラムの左右振り分けがオリジナルよりも明瞭。ボーカルの生声はフロントセンター、エコーは主に後方の左右、バイオリンは前方に対してサックスは後方寄りにと分けています。中間部のコンガは後方、電子音は四方から。変調のかかるコーラスも四方から鳴っています。

Standing at the Edge
朗読は生声がフロントセンター、ディレイは後方中心。ティンパニーや銅鑼は四方から包むように鳴ります。電子音は至る所から。

Spiral Galaxy 28948
イントロのシンセは四方を回るように動いています。ドラム、ベースは主に前方に展開。ギターは左前と左後。シンセ群は高音系のレゾナンスの効いたミニコルグは主に前方で展開。中音域は後方に配置。フルートは前後左右中央。

Warriors
パーカッション類は前方やや右寄り。朗読の生声はフロントセンター、変調した声は四方から、渦巻くように回転しています。電子音も同様。

Dying Sea
ベース、ドラムは前方。フィルター変調のかかったシンセは後方。サックスは前方寄り、ワウのかかったバイオリンは後方。中間部のシンセソロも後方で前方のサックスと明確に分けています。この曲はニックのペンになるので、あえてサックスをフロントにしているというあたり、分かってますね。

Kings of Speed
イントロギターは前方、続く電子音は後方、リズムは前方でスタート。バッキングのギターは後方に移動。コーラスに合いの手で入るシンセは前方。後半のギターリフは前方。バイオリンも前方。この曲はかなり塊感を意識しているようで、後方はギターのバッキングのみという感じです。

というような内容で、ウィルソンの手によってオリジナルの良さを残しつつ、サラウンドの包まれる音場感を楽しめる出来かと思います。隠し味で入っているフィードバックの効いたギターの音色など改めての発見もあります。

サラウンドについては好みもありますが、総じてプログレ系は楽しんでいます。イエス、クリムゾン、ピンク、ジェネシス、S.ハケット、M.オールドフィールドらの聴きまくったアルバムでも、サラウンド化によって新たな魅力が備わっていると思いますし、特にジェントル・ジャイアントのような音数の多いバンドは、個々の楽器が明瞭になるという利点もあります。
<管理人のサラウンド環境>
サラウンド化についてはAV系のセットを利用するケースが多いかと思いますが、管理人は元々ジェネレックのスピーカーを使っていることもあり、バランス接続のできるマルチchのプリアンプをDVD/BDプレーヤーとの間にいれて、サブウーファー含めたジェネレックのベースマネージメントによる5.1ch環境としています。
ホークスのDVDはPALが多いので、PAL再生可能なDVDプレーヤーも用意しています。