マイケル・ムアコック「エルリック・サーガ」コミック邦訳本&インタビュー記事紹介

昨年に角川から出版された久しぶりのマイケル・ムアコックの邦訳本「エルリック・サーガ1 ルビーの玉座/魔剣ストームブリンガー」の紹介。著作数に対して邦訳本はあまり出てませんが、今回はコミック版です。ムアコックさんが序文で満足していると記しています。原作に対して若干の脚色がされていますが、その点についてもこうしたかったと言うほどの絶賛です。グラッフィックを書いている人はフランス人で、メビウスなどのフレンチコミックの流れです。書き込みが細かく、細部に渡って世界観を描き出そうとしている感じです。原作はかなりグロい描写が特徴的なダークファンタジーですが、その辺りの描写もリアルです。苦手な方にはお勧めできないほどです。脚本担当のジュリアン・ブロンデル、コミックは3名の作家が担当し、キャラや世界観の設定を映画製作のようにしっかりと行っています。その資料なども掲載しています。税別定価3,300円と高価ですが、手の込んだ作りなので相応かと思いました。
ムアコックさんは最近は神経障害でギターが弾けないそうですが、ボーカル、ハーモニカの演奏は今もされているそうです。音楽活動としては19年のMichael Moorcock & The Deep Fix名義でのライブ盤Live At The Terminal Caféや昨年Spirits Burning & Michael Moorcockとしての第2弾The Hollow Landsが近年の作品です。当サイトのディスコグラフィを準備中です。また翻訳本についても長いことアップデートしていないので、整備する予定です。
インタビュー(2019年)
フランスと米テキサス州オースティンでの生活を年間半々でされているとのことですが、2019年にオースティンの地元サイトに掲載されたインタビューを紹介します。この頃はちょうど米国で「North American Space Ritual 2019」というイベントをニック・ターナーらと行う準備をしていた時期で、そのことにも触れています。

INT:あなたとホークウインドとの関係は長く、しばしば実りあるものでした。どのようにしてバンドと出会い、音楽的な関わりを持つようになったのでしょうか?
MM:私は50年代からバンド活動をしていました。ホークウインドは、当時アンダーグラウンド紙「Frendz」のジャーナリストだったボブ・カルバートに連れて行ってもらって、ほとんど最初から見ていました。私はポートベロー・グリーンでの無料コンサートの企画を手伝っていたのですが、その頃にはデイヴ・ブロックから素材を求められていました。私は「Sonic Attack」などをやりましたが、これはバンドのスタンダードナンバーとなり、[土曜日]の夜にも演奏することになりました。60年代から70年代にかけて、ラドブローク・グローブやポートベロー・ロードに住んでいたら、弦楽器を演奏するのはごく当たり前のことでした。
INT:「Warrior On the Edge of Time」でホークウインドとレコーディングすることになった経緯を教えて下さい。
MM:デイヴに誘われたんだ。スタジオに入って、ボブがステージに立てない時(彼は双極性障害だった)にステージでやっていた曲をいくつかやってみたんだ。2曲各1テイクで半日かかりました。
INT:「The Chronicle of the Black Sword」にはどのように関わったのでしょうか、またその結果には満足していますか?
MM:基本的には、そうだね。ニックは素晴らしい曲を作っていたが、意見の相違からバンドを解雇されてしまったので、彼の意見が聞きたいと思っていた。私が完全な状態で出演したのは、そのツアーを締めくくるハマースミス・オデオンでのバンドとの共演が最後だった。
INT:2019年にアラン・デイヴィやニック・ターナーと行ったイベント「North American Space Ritual 2019」について。
MM:ああ、とても楽しみだよ。彼らは、お金をもらってテレビで仕事をするよりも、無料のベネフィット・ギグをやった方がいいと思っていた頃のホークウインドの精神を受け継いでいるんだ。私は、そのような良い時代の感覚が好きでした。バンドと観客が対等であるという強い意識を持った60年代、70年代の最高の倫理観です。グレイトフル・デッドのライブとよく似ている。私は80歳を過ぎて重度の神経障害を患っているので、ハーモニカしか吹けません。でも、「Sonic Attack」のような私のお気に入りの曲は、きっとやれると思いますよ。
INT:ニック・ターナーとホークウインドの中心人物であるデイヴ・ブロックの間、ホークウインドの様々なメンバーや元メンバーの間で歴史的に多くの対立がありました。あなたはそのようなことに巻き込まれたことがありますか、それとも争いに巻き込まれないようにしていますか?
MM:私は最初の頃、和解を願っていました。しかし、その後は静かに彼らとの共演をやめました。私はニッキー(ターナー)に同情していますが、デイヴの視点も理解できます。あの時は卑屈になりすぎた。私がニックたちとやるバンドは最高の状態だよ。
INT:あなたは、ブルー・オイスター・カルト、Spirits Burning、そしてご自身のDeep Fixなど、ホークウインド・ファミリー以外のミュージシャンともコラボレーションしていますね。あなたが参加したすべての音楽プロジェクトの中で、あなたにとって最も思い入れのあるものはどれですか?また、後悔していることはありますか?
MM:自分が音楽と歌詞の両方を担当している自分の作品が一番好きです。でも、アルバート・ブーチャードが「An Alien Heat」(Spirits Burning & Michael Moorcockの2018年のアルバム)で、行ったことはとても気に入っています。でも、ホークウィンドの歌詞を演奏するのは楽しいですよ。後悔してるのは、すぐにレコーディングをやめてしまうこと。私は、何かの拍子にプロジェクトが頓挫すると、すぐに諦めてしまいます。これは、小説家として一人で仕事をすることに慣れているせいでもあります。例えばホークウィンドの場合、デイヴがより規律正しいプロデューサーであるため、プロダクションが良くなる傾向があります。
INT:North American Space Ritualがあなたの最後のステージになることが発表されました。少なくともコンサートでは。寂しいと思いますか?
MM:そうですね、パフォーマンスは大好きですので。ホークウインドのパフォーマンスをすることが一番楽しいと思っているんだ!。
INT:作家活動の合間にも音楽活動を続けていくのでしょうか?
MM:現在、Deep Fixの新しいアルバム「Live From the Terminal Café」を仕上げているところだよ。
INT:音楽が執筆活動を促進したり、その逆のケースはありますか?あなたの多くの創作プロジェクトの間には具体的な線引きがあるのでしょうか?
MM:私の作品は、本、コミック、音楽などすべてが相互につながっています。キャラクター、テーマ、ストーリー、グラフィックのテーマなど全てが互いに影響し合っている。いつもそうだよ。
INT:バストロップ(オースティン郊外の街)に引っ越してきたのはいつですか?ここ2、3年のアメリカの変化と、その中でテキサスの保守的な政治家が果たした役割を考えると、あなたがここにいる理由は何ですか?
MM:私が25年前にこの地に移ってきたのは、家族の事情と、保守的な考え方を知りたかったからです。相手がどこから来たのかを知らなければ、議論することもできませんからね。オースティンは、保守的な州の真ん中にある、進歩的で、音楽的で、本を読む町であり、住むのに適した拠点だと思いました。私は、敬意を持って意見を交換することが大切だと考えています。この家は古くて天井が高いんです。床から天井まで本棚があり図書館のようです。本棚の数が多すぎて動かせません。本棚と家を売って引っ越すか、オースティンとパリの間を移動できなくなるまでじっとしているか。とてもいい案配だと思います。
最近の関連作
以下、最近の関連作品です。スピリッツ・バーニングは元BÖCのアルバート・ブーチャードを担ぎ出して、かつてのBÖCの再来を図ってますね。ホークスメンも参加、相変わらずの豪華メンバーでのプロジェクトになっています。


